過払い金返還請求をするデメリットと回避の方法
1 過払い金返還請求は完済事案と残有り事案に分かれる
過払い金返還請求は、主に平成19年以前から消費者金融やカード会社から借入をしていたときに、法律で認められたより高い利率で借入をしていたので、超えている部分が払いすぎになっているものです。
過払い金返還請求のデメリットを考えるうえでは、既に完済している業者に対して過払い金返還請求をする場合と、今も債務が残っている相手方に対して過払い金返還請求をする場合で分けて考える必要があります。
弁護士は、前者を完済事案、後者を残有り事案と呼ぶことが多いです。
2 残有り事案の場合は、いわゆるブラックリストに載ることがある
残有り事案は、現在返済中の相手方に対して過払い金返還請求を行うことになります。
この場合、過払い金があるかないかは、相手方から取引履歴をもらう等して調査しなければ正確には分かりません。
過払い金があって、実際返ってくる状態にあることが明らかであればよいのですが、過払い金があっても、債務の方が多くて返済すべきものが残ったり、過払い金が全く発生しない場合もあります。
相手からすれば、債務が残るケースでは、弁護士に依頼して約束どおりの返済をしないことになり、信用情報に事故登録される、いわゆるブラックリストに載る可能性があります。
そうすると、相手方とする業者のカードだけでなく、新しくカードが作れないとか、ローンが組めないという可能性が高くなります。
3 完済事案の場合は、相手方とする業者のカードが使えないこと
完済事案は、今は債務が残っていない相手方なので、約束どおり返済していないという問題が生じることはありません。
ですから、信用情報が傷つくという心配はありません。
ただし、相手とする業者のカードは、完済事案ならば現在使用していないはずですが、今後使用できない可能性はあります。
4 残有りの場合のデメリットの回避方法
では、残有り事案で信用情報に事故登録されるのを回避するためにはどうすればよいでしょうか。
一つは、完済してから過払い金請求をすることです。
こうすれば、完済事案になりますので、問題なくなるというわけです。
二つ目は、過払い金があって返ってくるケースであることが明らかであれば、ブラックリストにのらないと言われていることから、あらかじめご自身で取引履歴を取得して、弁護士が計算する等して過払い金が返ってくるケースであることを確認する方法があります。
弁護士に過払い金返還請求を依頼した場合の裁判の流れ
1 過払い金は,裁判をして請求する方が金額が多くなりやすい
過払い金を業者から取り返す方法としては,裁判をせず業者との話し合いで取り返す方法と,裁判をして取り返す方法の2つがあります。
一般的には,裁判をしても依頼者の手間はほとんどかからず,弁護士費用や実費を含めても裁判をした方が金額は多くなる傾向にあります。
ここでは過払い金返還請求の裁判のおおまかな流れをお伝えします。
2 弁護士が訴状を作成,裁判所に提出
依頼を受けた弁護士は,訴状(そじょう)という書類を作成して,裁判所に提出します。
訴状は,業者から取り寄せた取引履歴や,引き直し計算(高すぎる利率を法律で認められた利率に直して計算していくら過払い金があるか見る)結果等を添付して,〇円過払い金があるから全額を払えという判決を求める内容の書類になります。
弁護士は,依頼者と相談して過払い金の返還を求める裁判をすると決めてから,おおむね1週間から2週間程度で提出します。
3 期日に出廷する
訴状を審査した裁判所は,弁護士が裁判所に行く1回目の期日を1ヶ月程度後の日で決め,弁護士が裁判所に出廷します。
4 次回期日までに書面作成や報告・相談をする
1回目の期日で,1ヶ月程度先の2回目の期日を決め,それまでに弁護士が準備書面という追加で主張する書面を作成したり,依頼者に期日の報告をします。
弁護士は,依頼者と相談して,判決をもらうまで進めるか,業者と何円返してもらう条件で交渉するか等の方針を決めます。
5 和解又は判決後入金へ
業者は,負ければ全額支払わなければならない可能性もあるので,おおむね2回~4回程度の期日で裁判をする前より多くの金額を返す旨の提案をしてきます。
裁判後も,話し合いをつけて和解で終了することもありますし,全部勝訴の可能性が高ければ期日を重ねて判決をもらうこともあります。
和解では和解した日からおおむね1~4ヶ月程度,判決では判決日から1ヶ月程度で入金されるのが一般的です。
入金までで,裁判を始めてからおおむね3か月~1年くらいです。
いずれにせよ,裁判は弁護士・業者・裁判所の間で進むので,ご本人が裁判所に行ったり,ご自分で書類を作成しなければならないことはほぼありません。
6 裁判を怖がる必要はない
裁判というと,何となく怖いとか,大変という印象をお持ちの方もいらっしゃいます。
しかし,過払い金に関しては,こちらが返してもらう側であり,特に責められるものでもありません。
弁護士が出廷から書類作成まで行いますので,ご本人は弁護士の報告・相談をきいてどこまで続けるかを決めれば足ります。
裁判の流れ等はお気軽に弁護士までおたずねください。
過払い金があるかどうかわからない方へ
1 過払い金とは
過払い金とは,平成22年以前に,利息制限法と出資法で異なる上限利率が認められており,出資法には反しないが利息制限法に定める上限利率を超える高い利率でお金を借りていた場合に,利息が払いすぎになっているものをいいます。
利息制限法の上限利率は,借入額によって異なりますが,15~20%です。
過払い金があるかは,正確には取引履歴を貸金業者に出してもらわなければ分かりませんが,ここでは簡単に過払い金があるかを大体で見分ける簡単な方法をお伝えします。
2 平成19年以前から借入があること
まず,過払い金があるためには,利息制限法の上限利率を超える高い利率で借入をしている必要があります。
法律で利息制限法と出資法の上限が統一されたのは平成22年ですが,それ以前でも,消費者金融やカード会社等の貸金業者は,自主的に利息制限法の上限利率を超えない範囲内の利息で貸し出すようになった時期があります。
それは,おおむね平成18年~20年頃です。
平成18年の最高裁判所の判決で,利息制限法違反の貸付は,ほぼ全て違法であると認められました。
この判決を受けて,大手の消費者金融やカード会社は,それまで利息制限法を超える利率で貸していたのを,利息制限法の範囲内にまで引き下げるようになりました。
この対応は,ほとんどが平成19年中に終了していますので,平成19年以前から借入をしている場合でなければ,利息制限法の範囲内の利率であるため,過払い金は発生しないのです。
3 消費者金融又はカード会社のキャッシング(借入)であること
利息制限法の上限利率を超える高い利息で貸していたのは,基本的に消費者金融とカード会社です。
銀行のカードローンや住宅ローン,車のローン等は,昔からこのような高い利息の商品はなかったことから,銀行のカードローンや,車のローン等は何年払っても過払い金が発生しません。
これは,カード会社の買い物のリボ払いにも当てはまります。
ですから,過払い金があるためには,消費者金融又はカード会社のキャッシング(借入)でなければならないのです。
4 完済から10年以内であること
過払い金は,最終取引から10年たつと,消滅時効の成立により返してもらえなくなるという最高裁判所の判例があります。
今もキャッシングの債務が残っている方は,基本的に最後の取引は先月や先々月でしょうから,時効の問題はありません。
しかし,完済している方は,基本的に,完済日が最終取引日ですから,完済から10年たつと時効により過払い金を返してもらうことはできなくなります。
5 まとめ
このように,平成19年以前から,消費者金融又はカード会社でキャッシングをしていた方は,時効にかかる前にお早めに弁護士等にご相談ください。